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最高裁判所第一小法廷 昭和33年(し)12号 決定

主文

本件特別抗告を棄却する。

理由

本件特別抗告の理由は別紙申立人作成提出の特別抗告と題する書面(二通)記載のとおりである。

按ずるに、被告人のため上訴をすることができる者は原審における代理人又は弁護人(刑訴三五五条)及び被告人の法定代理人又は保佐人(同三五三条)に限られているのであって、何等これらに該当しない被告人の父重川春正からの本件控訴申立は法令上の方式に違反する不適法なものである(当庁昭和三〇年四月一一日第一小法廷決定、刑集九巻四号八三六頁参照)。そして第一審裁判所は、控訴の申立が明らかに控訴権の消滅後にされたものである場合を除いては、公判調書の記載の正確性についての異議申立期間(刑訴五一条二項、規則五二条二項)の経過後、速やかに訴訟記録及び証拠物を控訴裁判所に送付することを要し(規則二三五条)、控訴の申立が法令上の方式に違反していることを理由として右申立を棄却することはできない(刑訴三七五条、旧刑訴三九七条参照)。そして、第一審裁判所が本件控訴申立書を受理した後、その誤りを発見して、好意的に当事者に注意を促がすことはあり得たとしても、そのような措置をしなかったからといって、その不措置自体違法というべきものではなく、また控訴裁判所を拘束すべき何らの効力を有するものではない。

さればこれと同旨に出た原判示は正当であり、所論は結局のところ単に原決定の法令違反を主張し立法を非難するものに過ぎず、違憲の主張は前提を欠き、特別抗告適法の理由に当らない。

よって刑訴四三四条、四二六条一項により裁判官全員一致の意見で主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 入江俊郎 裁判官 下飯坂潤夫 裁判官 高木常七)

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